2022年3月30日から4月1日の3日間で開催されているスポーツグッズEXPOで、
住友ゴム工業株式会社 スポーツ事業本部 企画業務部部長 平野 敦嗣 氏氏がダンロップのブランド戦略について講演された。
本記事ではその講演を元に、住友ゴムのダンロップのブランド戦略、テニス市場、ゴルフ市場へのマーケティング戦略について考察していきたいと思います。
スポーツ―ビジネスやマーケティングに携われる方に、興味がある方には、平野氏の本質的なメッセージもあったので、紹介させていただきたいと思います。
ダンロップと住友ゴムについて
まず、ダンロップと住友ゴムの関係についてのおさらいです。
ダンロップというブランドを住友ゴムが運営しているということを知らない人も多いのでないでしょうか。
恐らく多くの方は、ダンロップ=海外ブランドという認識をされていると思います。
ダンロップは、元々はイギリスで誕生したブランドです。
1909年に英国ダウンロップ日本支店として、神戸で開業したのが住友ゴムの始まりとなります。(住友グループの経営参加は1960年から)
タイヤの生産から開始し、ゴルフボール、テニスボールと生産を拡大していきました。
そういう意味では、住友ゴムが元々はイギリスの会社なのです。
住友ゴムによるダンロップ買収
2017年に住友ゴムがダンロップを買収しました。古くからの親子関係が逆転したのです。
買収する前までは、住友ゴムがダウンロップブランドを扱える範囲は、日本、台湾、韓国のみと制限がありました。
それでもダンロップは、テニス界では、マッケンローやグラフといった当時の世界最高のプレイヤーのスポンサーをしており、ワールドワイドでトップブランディングができていました。
しかし、世界中でダンロップを扱う会社の勢いが落ちてくると、ワールドワイドでのブランディン戦略が難しい状況となり、社運を賭け、買収に踏み切りました。
住友ゴムによるダンロップの世界戦略
2017年住友ゴムがダンロップを買収して行ったことは、以下の3つです。
・テニスの最高峰の舞台である、ウィンブルドンで住友ゴムが扱っているブランドをダンロップに統一した。
・テニスのグランドスラムである、オーストラリアオープンで公式球としてダウンロップのテニスボールが採用された。
全豪オープンは、全世界で10億人が視聴すると言われているスポーツ最大規模のイベントである。
グランドスラムで日本のブランドが公式球として採用されたのは、はじめてのことである。
・また、2020年春夏モデルより、ダンロップブランドのテニスアパレルをグローバルで統一し、
全世界でのダンロップブランドの訴求に力を入れている。
ダンロップといえば、ゴルフをイメージされる方も多いと思いますが、上記の通り2017年以降はテニスへの注力が鮮明となっています。
XXIO
ここからは住友ゴムのゴルフ向けブランドのXXIO(ゼクシオ)のブランディングについても紹介していきます。
XXIOはゴルフ好きでないと知らない方も多いと思いますが、ゴルフ好きの方は最近よく見かけると思います。
主にゴルフボールや、ドライバーを取り扱っています。
XXIO(ゼクシオ)を住友ゴムは2020年よりスタートしたブランドです。
※参考情報ですが、XXIはローム数字で21という意味でO=GO ONと王の意味を持っており、21世紀に向けての新ブランドを立ち上げるという想いを込めたネーミングとなっています。
XXIOのブランドとして大切にしていること
平野氏は、XXIOというブランドを立ち上げ、浸透させていく際に大切にしたことを「変えてよいものと 変えてはいけないものをしっかり線引きするとのこと」と答えました。
変えていいもの→「性能」常に新たなテクノロジー、素材を追求し、お客様の期待、信頼に応える
変えてはいけないもの→ゼクシオの世界観 名前、機能コンセプト、基本デザインなど
この線引きをしっかりすることは、ブランドビジネスの基本となる考え方ではないだろうか。
住友ゴムにとってブランディングとは
平野氏は、ダンロップやXXIOのブランディンを通して学んだことはを下記のように総括した。
①ブランドとは、信頼の証であり、企業と顧客を結ぶ「絆」である。
②ブランドとは、顧客との「約束」である。顧客に何を提供することを約束するのか?
自分たちが提供できる価値は何なのか?顧客視点で徹底機に考え抜くこと
③ブランドを育てるとは、製造から販売まで会社一丸となって継続的に真剣に取り組むべきこと
ブランディングを実現させていくうえで、近道はなく、顧客の声をよく聞き、信頼を絶対に裏切らない判りやすいメッセージ、納得感があるコミュニケーションを継続していくことを強調していました。
近年、特に意識しているのは、買っていただく前に、まずは好きになってもらうことだという。
顧客とのコミュニケーションは、商品のPRから入るのではなく、その前にブランドを理解していただく、ブランドの世界観、企業を理解していただくことを大事にしている。
SNSなどのいいね、や共感である。
SDGsへの取り組みに力を入れたり、Youtubeで松山英樹がXXIOのドライバーを使って打ってる動画をあげており、60万回以上再生されている。
今後、YoutubeやSNSを駆使し、グローバルでどのようなマーケティング施策を展開していくのか注目していきたいと思います。
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